POINT 九州エリアで小水力発電事業を展開している九州発電様からのご要望で、新規建設する発電所における小水力発電システムの開発・導入を担当。不測の事態発生時の迅速な対応を約束しつつ、お客様の計画よりも約5%多い発電量を得られる環境の構築に成功しました。
導入前の課題
発電機器の価格高騰やメーカーの対応遅延により、事業計画が進まなかった
水力発電の中でも小規模なものを「小水力発電」と呼びます。水の流れと落差で発電でき、一般河川・農業用水・砂防ダム・上下水道など、現在見過ごされているエネルギーの有効利用が可能です。開発可能な場所が多く残存していることや、天候の影響が少ない安定的なエネルギー源であることに加え、2012年7月に施行された国の固定価格買取制度が、近年の小水力発電の施設増加を後押ししています。
小水力発電に特化して発電事業を展開し、鹿児島県・佐賀県で発電所を建設・運営している九州発電株式会社様(以下、九州発電様)にとっても、この固定価格買取制度は事業の根幹を成す重要な存在です。一方で、望ましくない状況も招いていました。同制度の施行により同様の事業者が増え、発電機器の需要が10倍近くまで膨らみ、発電機器の価格が高騰しているのです。
ほかにも発電機器の需要増加は、新規機器の依頼から納入までに5年かかるケースや、発電機器にトラブルが発生した際にもすぐに修理できないケースの発生につながっていました。もし発電機器がトラブルで停止してしまうと、1日で数十万円以上の大きな損害が出てしまいます。こうした状況により、九州発電様は新たな事業をなかなか展開できず、思うように事業計画を進めることができなかったのです。
製品
少ない流量で、より多くの発電量を得られる機器を開発
九州発電様はこれまでに5カ所の発電所を建設していましたが、次に建設する発電所で使用する発電機器は、想定外の事態にも迅速かつ柔軟な対応が可能なメーカーの製品を選定したいと考えていました。
そこで、複数社から提案を募った九州発電様は、導入費用の低減はもちろん、故障時の迅速な対応や発電機器の品質など、いくつかの要件を重視して比較検討しました。その結果、重視していた要件をクリアしていたことに加えて、水車や発電機、操作盤などをすべて自社で製造していることなど、メーカーとしての総合力の高さを評価し、三井三池製作所の提案を採用することにしたのです。
今回導入した小水力発電システムは、横軸フランシス水車を採用しています。設置場所の水の落差と流量によって使用できる水車は異なりますが、横軸フランシス水車はこの対応可能な範囲の広さが特長です。さらに三井三池製作所が開発した小水力発電システムは、少ない流量で多くの発電量を確保できる点が強みです。同期発電機の制御には多少苦労しましたが、最終的には大きな問題もなく完成させることができました。
導入後の効果
稼働後10カ月間の実績で、計画を約5%も上回る発電量を獲得
九州発電様にとって6カ所目となる新たな発電所は2019年末に完成し、本格的に稼働を開始しています。導入後の稼働実績も順調で、当初九州発電様が計画していた10カ月間の発電量と、実際の発電量を比較したところ、計画を約5%も上回る発電実績を納めているそうです。思い通りに事業計画を進められたことと、期待以上の効果を得られていることについて、九州発電様は高く評価しています。
また、この発電所ではまだトラブルが発生しておらず、三井三池製作所が迅速な対応力を発揮するような事態には至っていません。ただ、九州発電様と同じ九州内に開発拠点を持っていることは、大きな安心感につながっています。今後も、新規発電所の建設を考えているという九州発電様にとって、今回の成功が大きな飛躍への確実な一歩となることを願っています。